シカゴからロサンゼルスまで

ヨッ、調子どう?

My Hair is Bad「運命/幻」を聴いた

 

 

遅ればせながらマイヘア新譜のレビュー。

 

今回は、これ以上余計な事は言わない。

 

 

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My Hair is Bad「運命/幻」

 

収録曲

1.運命

2.幻

 


My Hair is Bad - 両A面シングル「運命 / 幻」ティザー

 

 

 

傑作を上回る傑作、完成す

 

9月6日にリリースされたメジャー2枚目のシングル。さらに2ndアルバムも発売を控えている今、改めて彼らの凄みを思い知った。まず年に200本以上ライブをやりながら1年ペースでシングル・アルバムを出し続けているのが凄い。ましてやそのクオリティが維持されるどころか遥かに上回ってくるから本当にこのバンドは恐ろしい。

 

さて、マイヘアと言えば1番の代表曲は「真赤」だろう。約2年前にMVが公開され、じわじわと話題になり今では驚異の650万回再生、MステやバズリズムでもMVが紹介された。

 

そんな傑作の連作となったのが去年の5月に発売したメジャー1枚目のシングル『時代をあつめて』に収録されている「卒業」という曲だ。

 

この2曲はボーカルの椎木知仁がヒモ時代に付き合っていた彼女との経験を赤裸々に綴っており、間違いなくマイヘアの中で不動の連作「真赤/卒業」となった。

 

しかし、今回発売された2枚目のシングル「運命/幻」は個人的にそれを上回ってしまったと思っている。永遠を感じさせるような「運命」というタイトルと一瞬を感じさせる「幻」というタイトル。一見対極に位置していると思われる2曲だがなんて儚くて、虚しい連作なんだろうか。総合力だけでいうと、前作を超えていると思う。

 

前置きが長くなったが、これからレビューを始めることにする。

 

 

 

誰もが経験する、別れ

 

今回の「運命/幻」は連作のため、どうしても切り離して語る事はできまい。この2曲は男女の別れ、そして椎木自身の過去を悲しいくらい鮮明に映し出している。

 

偶然だった

最後の最後であの日と同じ服

僕は遅れて行った

見慣れない短い髪だった

気まずくてコーヒーで流し込んだ

でもなぜか味がしなかった

沈黙が続いてた

その瞬間 僕は悟った

(運命)

 

「運命」という曲はある喫茶店で男女が別れを告げるさまを男目線から刻々と描いている。これは『一目惚れEP』に収録されていた「悪い癖」という曲とリンクしている節が曲中にいくつも登場する。(喫茶店、グラスが割れた等)しかし、椎木はもはや過去の恋愛をビジネスに使っているので今作は半分フィクションとなっている。

 

それにしても、 椎木の描写力には毎回度肝を抜かれる。誰もが一度は経験した/経験するであろうシチュエーション・感情を見事に描き出し、既視感を作り出すことからまるで映画を観ているかのような錯覚にリスナーは陥る。これは椎木自身が嘘偽りなく、カッコつけることなく、赤裸々に自身を吐露しているという点に尽きる。

 

最後の最後でね本当はね

聞きたかったよ

ガラスの破片を拾いながら

床を拭く君の手に目を疑ってた

どうして指輪 外してなかったの?

(運命)

 

指輪、という強烈なフレーズがこの曲をさらに切ないものにしている気がする。2人お揃いの「思い出」は時を経て、その形の意味を変えていく。付き合っているときはあんなに大切な物だったのに、別れた途端価値がないと感じることもある。指輪を彼女が最後まで付けていた訳、そんな野暮な事を男は聞かない。

 

男目線で描かれた「運命」からは永遠を感じさせる恋愛ではなく、いつか終わりが来ることが必然だという諦めに近いものを感じる。この曲が終始力強いテンポで進むのは男の切り替えを強調しているような印象を受ける。

あんなに仲の良かったカップルが別れてしまう訳、それが運命という言葉で片付けられたら、どんなに悲しいことだろうか。

 

 

 

誰もが経験する、後悔

 

 前述した「運命」に対をなす「幻」という曲がおそらくこの物語を完結させていることは言うまでもない。女目線で描かれたこの曲は一瞬の儚さをまるで永遠の出来事のように思い返しているのが印象だ。

 

真夜中に目覚めちゃったな

なぜか泣いてしまった

優しい夢を見た

心まで溶けていくの

その熱が残るような

あなたの夢だった

(幻)

 

優しい語り口調から入るこの曲には、終始悲しさが漂っているような気がする。「卒業」とはまた一風変わった角度から、後悔を繰り返している。

出来事を詳細に描写している「運命」に対してこの曲は全体的にぼんやりとした描写が続いていて、夢を見ているような感覚に囚われる。

 

椎木は自身をメンヘラと公言している口、女目線で書いた詞の方が彼自身の感情が見え隠れしているように見える。

 

こうして2人でいるとさ

時間が戻ってくみたいだね

「ねぇ もしも

あなたが嫌じゃなきゃもう一度」

そう言うと笑ってた

ねぇ まさか また夢だ

(幻)

 

別れることが「運命」だと悟った男と、別れた後に「幻」のような夢を見ている女。

この連作には、男女の微妙なすれ違いが刻々と歌詞に描き出されていて、虚しい。

 

恋はバランスで、愛はタイミングだとすると、それをずっと維持するのはどんなに大変か。

 

この曲を聴いて、そう感じた。

 

 

 

いつまでも過去の中の女たち

 

 ボーカル椎木知仁は、もう吹っ切れてる、ビジネスだ、とインタビューでは冗談交じりによく答えているが本当のところはどうなのか。

 

「あなた犬みたいでいい」と言われた「真赤」

 結婚したいなって思ってた「グッバイ・マイマリー」

いつまでも大人になれなかった「卒業」

 東京は君の匂いがする。

同時に思い出す、上越。

ずっと信じてくれた「ドラマみたいだ」

なぜか2人とも泣いていた「悪い癖」

そして終わりだと悟った「運命」

 

椎木にとって「あの女たち」=「woman's」は絶対だった。でも別れは必然だった。そんな過去を、彼はいつまで歌にするんだろう。

 

どんなに音楽で精算しようとしても、消えない証拠が増えるだけだ。

 

 

 

 

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