シカゴからロサンゼルスまで

ヨッ、調子どう?

RADWIMPSの全アルバムを6000字で語ります【前編】

 

※2016年8月に書いたコラムの焼き直しです。

 

  

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 待ちに待ったRADWIMPS新アルバム『君の名は。』が8月24日(水)から発売が開始されることが決まった。

 

このアルバムは8月26日(金)より公開される新海誠監督のアニメーション映画最新作「君の名は。」の主題歌 "前前前世"をはじめとしたボーカル楽曲4曲と劇伴22曲、計26曲のサウンドトラックとして制作されたものだ。この映画「君の名は。」は上映前にもかかわらず既に期待値が高く、特に主題歌である"前前前世"はリリース前から多くの注目を浴びている。そこには RADWIMPS の人気が少なからず影響していることが窺える。 

 

 

 そこで今回は1枚目のアルバム『RADWIMPS』から、初のオリコン10位入りを果たし彼らの転換点となった4枚目のアルバム『RADWIMPS〜おかずのごはん〜』までをアルバム1曲ごとに振り返り、彼らの軌跡を辿っていこうと思う。彼らの現在までの人気の秘密を紐解く手掛かりとなるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

1stアルバム『RADWIMPS』

 

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収録曲

1.人生 出会い

2.自暴自棄自己中心的(思春期)自己依存症の少年

3.心臓

4.もしも(「みんな一緒に」バージョン)

5.さみしい僕

6.コンドーム

7.青い春

8.「ぼく」と「僕」

9.あいまい

10.嫌ん

11.「ずっと大好きだよ」「ほんと・・・?」

12.愛へ

13.あいラブユー

 

 

   洋次郎含めた旧メンバー5人が高校生の時に作った、1stアルバムの一曲目はタイトルがすべてを物語っている"人生 出会い"から始まる。どこか懐かしさを感じるメロディと荒削りなサウンドが響き合い、若き洋次郎の歌声が心をギュッと握りしめるような、切なくて寂しげな感覚に陥る。

 

   そしてイントロの掻き鳴らすようなギターが前曲の切なさをかっ飛ばすような "自暴自棄自己中心的(思春期)自己依存症の少年"に移る。この曲は洋次郎が17歳のときに作った曲で、当時のモヤモヤとした感情がありのまま歌詞に表れている。

 

 そこから3曲目"心臓"へ。メロディは一転して緩やかで力強いものになり、洋次郎の真骨頂である全身愛の片鱗が曲から感じられる。高校2年生が作ったとは思えない深い愛に満ちた歌詞からは後の "有心論"や"オーダーメイド"を連想させるような雰囲気を併せ持っている。

 

   次はRADの通算1枚目のシングル曲の"もしも"である。この曲は 1枚目にもかかわらずファンの間では名曲として知られており、ライブのアンコール前にはサビが必ず復唱するほど親しまれている。

 

もしも…本当にもしも…君も僕の事を思ってくれてたら なんて考えてる僕をどうか叱ってやってくれないか

 

この歌詞からは、真っ直ぐで一生懸命だった青春時代を思い出させるような情緒すら感じる。この曲からRAD、いや洋次郎のラブソングが始まったといっても過言ではない。

 

 5曲目は切ない片思いをさらに掘り下げた"さみしい僕"だ。失恋時のどうしようもなさを"もしも"の世界観を引き継ぎつつ描いている。その穏やかなムードを一蹴するような 6曲目"コンドーム"の勢いにリスナーは圧倒される。洋次郎の端麗な英語詞の発音が曲のカッコ良さをさらに引き揚げていて、もはや失恋というヤワな心は置き去りだ。

 

   そこから再び青春時代に戻ったかのように曲は"青い春"へ。この曲の前向きな歌詞とは対照的な「Save me」というフレーズ、そこには今を駆け抜ける青年たちの苦悩や葛藤を、すべて呑み込んで手を差し伸べてくれるような温かさがある。そして全英語詞の 8曲目"「ぼく」と「僕」"に移る。そこからは3分弱の短くて儚いラブソング"あいまい"や何かを成し遂げてやるという強いメッセージのこもった"嫌ん "が続く。

 

   そしてリスナーの耳が満足してきたころに、11曲目にして渾身のラブソング"「ずっと大好きだよ」「ほんと?…」"が打ち込まれる。

 

君が僕といつまでも一緒にいれると言うのなら ほんとに僕はいつまでも君を好きでいられるのになぁ

 

切なすぎる心の叫びが年代を超えて迫ってくる感覚。その最高な流れを受けた 12曲目"愛へ"は愛する人や家族、そして全人類まで及ぶ愛のメッセージが5分間に詰め込まれている。「愛が僕を変えた」という直球すぎるフレーズは10代のRADにしかできない曲だったに違いない。

 

   そんな青春と愛を詰め込んだ贈り物のような 1stアルバムを締めくくるのは、溢れんばかりの好きと感謝を込めた"あいラブユー"である。まだ高校生だった彼らにしか表現できない世界を、寄り添って一緒に見せてくれるような優しいアルバムだ。

 

 

 

2ndアルバム『RADWIMPS2〜発展途上国〜』

 

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収録曲

1.愛し~明くる明け~
2.なんちって
3.そりゃ君が好きだから
4.夢見月に何想ふ
5.ノットビコーズ
6.愛し
7.ういんぷす学園休み時間
8.ヒキコモリロンリ
9.着席
10.俺色スカイ
11.音の葉
12.シリメツレツ
13.祈跡 -in album version-
14.ララバイ

 

 

 このアルバムはRADの根底にある、愛する人への歌という考えを最も表している6曲目"愛し"のサビまでを歌った"愛し〜明くる明け〜 "から始まる。2曲目の"なんちって"では英語詞と日本語詞を巧みに操った早い言い回しが、ロックでエモーショナルなサウンドに絡み合って異なる世界観を創り出している。RADの特徴である多彩なパターンの曲というのはこのような点にある。

 

   そして再びお得意のラブソング"そりゃ君が好きだから"へ。前作のアルバムの雰囲気を残しながらも、一歩前に進むような新しさをRADは常に提供してくれる。それを体現しているのが4曲目の"夢見月に何想ふ"である。どこか寂しげで優しい洋次郎の歌声にリスナーは自然と涙を流してしまう。

 

いつかの青すぎた夢も 季節は教えてくれよう 再び出会ったときに見舞うその色は違えど

 

という歌詞に、昔を振り返って立ち止まるばかりじゃだめだという洋次郎なりのメッセージが込められている。

 

 そして優しい英語詞と思わず体を揺らしてしまうハーモニーが重なる5曲目"ノットビコーズ"で耳を慣らすと曲はそのまま"愛し"へ突入。「愛しているという声が 泣いているように聞こえた」という涙腺崩壊フレーズから激しいギターリフへ移行。6分半の中で洋次郎の「愛」が何度も葛藤して、爆発するように高まっては静まる。

 

   歌詞の深みが血液に浸透した頃にはアルバムは次の"うぃんぷす学園休み時間"に移動している。そこから壊れたかのようなサウンドが全身の脈を打ち、"ヒキコモリロリン"が始まる。何も考えないでただハッピーになれる、気づいた時には身体が勝手に踊りだしているだろう。この手のRADの曲で素晴らしいのは気持ちよくなるようなサウンドと流れるような歌詞だ。

 

   8秒間の"着席"を経て、 10曲目の"俺色スカイ"でそのことを認識させられる。「Please, please be with me forever」というコーラスの気持ち良さ、二日酔いの後の朝焼けが脳内再生されていつでも陽気な気分になれる。これがRADの隠れたすごさだ。

 

 そこから11曲目”音の葉”へ。余計なものは省いた洋次郎の切ない歌声が、まるで映画のエンドロールのように流れていく。赤子を抱くような優しい曲におやすみなさいと言われている感覚に陥る。しかしその流れは次の"シリメツレツ"でぶち壊されることになる。マルチなパターンを提供してリスナーを飽きさせない、 RADらしい手法である。

 

   アルバムも終盤戦、ここで9分という長さの"祈跡"へ。このアルバムでは"愛し"に注目がいきがちだが、間違いなくRADの隠れた名曲だ。そして心地よくなるようなメロディに身体を委ねながら、ラストの曲 "ララバイ"に突入。明るい曲なのになぜだか切なくなってしまう。

 

次があるから言えるんだよ その日までララバイバイ

 

お別れの曲だけあって、このアルバムとお別れしてしまう寂しさと未来への希望を込めた2分50秒だ。

 

 

 

3rdアルバム『RADWIMPS3〜無人島に持っていき忘れた一枚〜』

 

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収録曲

1.4645
2.セプテンバーさん
3.イーディーピー~飛んで火に入る夏の君~
4.閉じた光
5.25コ目の染色体
6.揶揄
7.蛍
8.おとぎ
9.最大公約数
10.へっくしゅん
11.トレモロ
12.最後の歌

 

 

 2006年にリリースしたRADWIMPS3枚目のアルバムは、爽快なサウンドと洋次郎の滑らかな発音から織り成される"4645"から始まる。このアルバムのリード曲ということもあり、短く、熱量のこもった1曲目だ。そこから 2曲目"セプテンバーさん"へ。独特なメロディがどこか物寂しさを纏っていて、タイトル通り夏の終わりを感じさせる夏の名曲。ライブでの「OH セプテンバー」というコール&レスポンスは鉄板で、洋次郎の肺活量の凄さを垣間見ることができる。

 

   その"セプテンバーさん "のメロディを残したまま"イーディービー 〜飛んで火にいる夏の君"に曲は移る。"セプテンバーさん"とはまた違った瞬間的な爆発力のある曲。この高低差がRADの真髄であり、セールスポイントなのだ。

 

 それからアルバムは4曲目"閉じた光"へ。この曲は特攻隊をイメージした歌で洋次郎が音楽雑誌でもそのことを語っている。

 

笑った友が今日も ちょっくら死んでくるわと言った そしていつものよう 僕は左手を振った またね

 

この歌詞がすべてを物語っているかのような気にさせる。 5曲目の"25コ目の染色体"は1stアルバム"心臓"に次ぐRADの全身で愛するという精神面が曲に表れている。それはときに臓器や血液のイメージを彷彿とさせ、深い愛のRADあるいは洋次郎らしい解釈の方法であると言える。

 

   そこから曲は一変し、洋次郎の激しくも儚い世界観が歌詞に抽出された6曲目"揶揄"へ。これだけ世界を創っては壊す動作からは狂気すら感じる。これだけ激しく発狂した次の曲が、最期の命の輝きを歌う"蛍"なのだからいい意味で裏切られたとしか言えない。

 

 8曲目は切なくも真実の愛の形を歌った"おとぎ"である。RADの曲は和訳すると日本語詞とまた違った意味の深さに感嘆することが多い。それは洋次郎自身が帰国子女であり、日本語も英語もどちらの正しい言葉の意味を理解しているからだろう。

 

   そんな日本語詞代表でありこのアルバムの柱である 9曲目が"最大公約数"だ。

 

僕の二歩は君の三歩 僕の四歩は君の六歩 そんな風にこれからも 歩いていければいいと思うんだ

 

という秀逸な歌詞から始まるこの曲は、誰もが前向きな明日を描いていくことができる未来像を差し出してくれる。そこから流れをぶった斬るように10曲目"へっくしゅん "に移る。2ヶ国語を織り交ぜた濃密な歌詞を激しいサウンドが心を震わせる。

 

   そんなアップダウンを繰り返しながらRADの人気曲"トレモロ"へ。「満点の空に君の声が響いてもいいような綺麗な夜」という歌詞にもあるように、どこからか夜風と星々が降り注いでくるような感覚に居心地の良さを感じる。

 

   そしてこのアルバムを締めくくる 12曲、その名も"最期の歌"である。「生きているそれだけで 幸せだということ」この歌詞からはこのアルバムを締めくくるにふさわしい、温かさをもった抱擁なのだということ、すべてが許される空間であることが再認識させられる。

 

 

 

4thアルバム『RADWIMPS4〜おかずのごはん〜』

 

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収録曲

1.ふたりごと 一生に一度のワープ ver.
2.ギミギミック
3.05410-(ん)
4.me me she
5.有心論
6.遠恋
7.セツナレンサ
8.いいんですか?
9.指切りげんまん
10.傘拍子
11.ます。
12.夢番地
13.バグッバイ

 

 

 RADのアルバムの中でも特に名盤として名高いこの4枚目をリードする1曲目は、RADの数ある曲の中でも1、2番を争う代表曲 "ふたりごと"である。「今からお前に何話そうかな」で始まるこの曲はとにかく奥が深い。歌詞の意味を知れば知るほど色が濃くなって世界が広がっていく、そんな曲だ。「君と書いて"恋"と読んで 僕と書いて"愛"と読もう」その必殺フレーズから吐き出される洋次郎の思いが、この曲によって体現されている。

 

   そんな親や愛する人を思う気持ちが派生した 2曲目"ギミギミック"は独特なギターリフと曲中の赤子の産声が印象的な曲だ。そこからアルバムはさらなる変貌を見せた"05410-(ん)"へ。タイトルの意味は10から、んを引いて起こしてという意味らしく「さよならって言ったのは君なのに なんで泣いたの?」のような少ない日本語詞がキラーフレーズとなっており、ファンなら誰でも熟知している。

 

 それにしてもこの曲には嘘偽りない愛の歌が多い。それを最も証明しているのが究極のラブソング"me me she"である。

 

僕が例えば他の人と結ばれたとして 二人の間に命が宿ったとして その中にもきっと 君の遺伝子もそっと まぎれこんでいるだろう

 

この歌詞だけで涙腺はとっくにキャパオーバーを迎える。タイトルの和訳は僕 僕 彼女。彼女を思っているはずなのに結局自分のことばっかりという女々しくて切ないラブソングである。

 

   その流れを受け、"ふたりごと"に並ぶRADの代表曲にして5曲目の"有心論" がひっそりと始まる。全身愛の最高の形と称されるこの曲はこの世からいなくなってしまった彼女への追悼の曲であるとされている。

 

誰も端っこで泣かないようにと 君は地球を丸くしたんだろう? だから君に会えないと僕は 隅っこを探して泣く 泣く

 

という歌詞から彼女を神様のように崇拝する洋次郎の精神性を感じることができる。そんな愛を別の形で表現した 6曲目"遠恋"はRADでは初のフィクションの曲である。ライブではギターの桑原とベースの武田の激しいセッションがお決まりとなっている。

 

 そんなラブソングの流れから一線を置いた"セツナレンサ"は自分のエゴや依存を激しいタッチで描いた作品のような曲であり、大人になった洋次郎にしかできない曲だろう。それとは対照的な8曲目"いいんですか? "は洋次郎が高校生の頃に作った曲で当時は恥ずかしくて歌えなかったそう。覚えやすいサビと親しみやすさでファンの中では人気曲である。

 

   そしてアルバムも後半戦、"指切りげんまん"へ。

 

そうやって 約束して また破って 疑って遠くなって 繰り返して そんな約束なんて二人のうちどちらかを嘘つきにするためのものならばそんなものはいらないよ

 

という秀逸な歌詞を聴くと、今すぐ恋人と手を繋ぎたくなる、まるで優しさの指南書のような曲だ。その優しさは 10曲目"傘拍子"に伝染する。和訳を理解すると思わず泣いてしまうような優しさを備えたこの曲は秘めたパワーのバトンを渡すように"ます。"へ流れる。明るい曲調と「あなた一人と他全人類 どちらか一つ救うとしたら どっちだろかな? 迷わず YOU!」という吹っ切れた歌詞に思わず元気が身体中からこみ上げてくる。

 

   その次の曲はRADが所属していた会社名から名前をとった"夢番地"だ。この曲では自分がいまいる場所が誰かが願っていた場所で、自分が叶えたい夢は誰かがきっとどこかで叶えているという深く考えさせられる曲である。だから現状を悲観しすぎないで、前に進んでいこうよというRADらしい意思を感じられる。

 

   このようにたくさんの色を放ってきたこのアルバムは 13曲目"バグッバイ"で締めくくられる。シークレットトラックの"夜泣き"もノリで作ったとは思えない完成度の高さ、遊び心の奥深さ、それを見事に体現したこのアルバムにぴったりの終わり方である。

 

 

 

いかがだっただろうか。アルバムというのは一回聞き流すのではなく、何度も繰り返し聞くことによって愛着が湧いて色がついて、歌詞の意味を知ることで濃密な宝物のような箱へと姿を変えるのである。

 

特にこのRADWIMPSのアルバムはリリースされるごとに曲が洗練され、独自の新しい世界観が開花されていっているように見える。アルバムを出せば出すほど、曲を聴けば聴くほど深みが増す、これこそが彼らの人気の秘密なのではないだろうか。 

 

 

 

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