シカゴからロサンゼルスまで

ヨッ、調子どう?

さよならポエジー「前線に告ぐ」を聴いた

 

 

ああ、そうだ、このときだ。ちょうど1年前のことだ。彼らのデビューアルバム『前線に告ぐ』を聴いたんだ。鳥肌が止まらなかった。

 

あの日の渋谷のスクランブル交差点。灼熱の太陽がアスファルトをジリジリと焦がし、歩行者たちは汗を垂らしていた。外国人の観光客はカメラを掲げて奇声を上げながらポーズをとっている。人の波をかきわけて進めども、進まない。全員ローラーで轢いてやろうかと思った。

 

だがそんなことは出来なかった。それからさよならポエジーのデビューアルバムは、1年経って、俺の中で化けた。渋谷のスクランブル交差点で、信号が青から赤に変わり、センター街に差しかかる頃、静かに爆発した。

 

 

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収録曲

1. Nuts
2. 邦学のススメ
3. 觜崎橋東詰に月
4. SHIKEMOKU CITY
5. 万年不眠のテーマ
6. 拘束のすべて
7. 金輪際
8. 二束三文
9. 前線に告ぐ
10. 生活について

 

大器晩成、ということばが彼らには最も似合わないことを思い知った。デビューアルバムにして、傑作。

 

もはや他の言葉では形容し尽くせない程、癖のないメロディーライン、突出した日本語のセンス、歌に込めた熱量が凄まじい。哀愁漂うローテンポの曲調から、爆発的なアップテンポへの転調。きっと時代が違えば作家、いや文豪になっていただろう歌詞の言葉選びの繊細さ。

 

舞台上で怒鳴る音楽に暮れる日常は それなりの疲弊と情のロマンス
暮らしの常套句に「あの人みたいに」と そう言っては夜に計る密葬

(拘束のすべて)

 

愛書と戦闘服 刻み切った前髪も 内向的 推敲を漂う日々も 空腹も 綺麗な耳朶も まあ すべて愛しい 人間だしな

(金輪際)

 

溢れんばかりの才能を、まるで何もしてない顔でひけらかす、曲の数々。しかしこの男、当事者にしてボーカル、オサキアユはそれさえも歌にしてしまう。この曲がボディーブローのようにゆっくり、1年を経て、俺の懐に飛び込んだ。

 

でもそれなりの才能で 俺は俺を救ってやろう 苦悩の割に実りのない この感性を愛している 不甲斐ない日々も能書きも きちんと束ねて置いておこう いつか売り捌くその日まで 凡ゆる不安も耐えるまで

(二束三文)

 


さよならポエジー - 二束三文(Official Video)

 

 

いつもと同じ景色。騒音と雑多の群れ。渋谷駅を降りて、スクランブル交差点を越えて、センター街に差しかかる。信号は青から赤へ。残飯のように押し出された人々の波にさらわれて、凡ゆる感情も流されて、また生活の中に戻っていく。器用なように見えて、器用ではない。ローラーで轢かれているのは、俺の方だ。

 

さよならポエジーが描いている、前線とはまさにこの街であり、この人並みだ。脱走犯を試みて、彼らの音楽を聴いていたら、なぜか感傷に浸ってしまった。ほんとに、阿呆らしい。

 

 

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